創業計画書とは
あなたは創業計画書というものを作成したことがあるでしょうか?これから創業しようとする人は、融資を受ける必要のない人でも作成してみるといいでしょう。
創業計画書には、創業者自身のためのものと、金融機関など外部の関係者向けのものとがあります。この違いをまず押さえておきましょう。
① 創業者自身のためのもの
・創業者自身が創業の計画を練るためのもの
・創業者自身の熱い思い、ビジョン、アイデアが込められたものである
② 金融機関など外部関係者向けのもの
・金融機関からの資金調達や役所等から補助金や助成金を獲得するためのもの
・合理的で実現性の高いものであること
・お金の流れが明確であること
創業者自身のための創業計画書は、創業者のビジョンや、アイデアなどの主観的な情報が主になりがちでそれはそれで構わないのですが、金融機関など外部関係者向けのものは、融資や補助金等のお金を引き出すためのものですから、具体的で説得性のあるものでなければなりません。
わかりやすくいえば、「これならお金を出してもいいだろう」と銀行や役所に思わせるものでなければならないということです。そのためには、やはり目標や計画、損益の見込みなどが具体的な数値で表されている必要があるということです。
創業計画書を作成する前にまずあなたがなすべきこと
創業計画書を作成する際に、まずあなたがすべきこととは何でしょうか?
それは、次の2点です。
① 創業する事業とこれまでの業務経歴との関連性を確認すること。
② 創業時に役に立つと思われる経験、知識、ノウハウ、人脈を整理すること。
金融機関の貸出審査において重視されるものとして創業の目的や動機があります。なぜなら創業する場合、たいていは創業者自身のこれまでの業務経歴がベースになってそれが目的や動機になっているからです。
しかし、ここで重要なのは、自身の持つ技術やノウハウ、ネットワークなどの経験を用いて、「誰に」「何を」提供するのか、そして、その結果どのような付加価値が生じるのかが明らかになっていなければなりません。
自身の漠然とした夢を語るだけでなく、これまで何を実践し経験したかを確認し、自身が蓄積した無形の財産が何であるかを整理し、果たしてそれが創業のシナリオと整合するものであるかどうかをしっかり確認することが必要といえます。
これらを確認し整理することで、「何をすべきか」が明らかになるのです。
創業計画書を作成するとき確認すべきこととは
創業計画書を作成する場合、確認すべき点は次の4つですが、あなたが既存のビジネスを独立してやる場合と、新規のビジネスを立ち上げてやる場合とではポイントの置き方が違ってきます。
① 独創性の有無
② 実現可能性
③ 収益性
④ 継続性
当然のことながら、新規のビジネスを立ち上げる場合の方が、4つの項目とも想定が難しくなります。
独創性はあるのか
このうち独創性の有無については、事業化のリスクとも関連があり、綿密に検討しなければなりません。なぜなら、その事業(製品やサービスとおきかえてもいい)をどれだけ利用したいか、購入したいかという市場ニーズの把握が非常に難しいからです。
そして創業者自身の「この製品(サービス)は必ず世の中に受け入られるに違いない」という思い込みやひとりよがりがある場合は危険です。
ですので、「誰がその製品(サービス)を利用するのか」「果たしていくらならその製品(サービス)を買ってくれるのか」「どうやって販売するのか」ということなどを綿密に検証していく必要があります。
その創業計画は実現の可能性があるか
創業計画書を作成する際に大切なポイントのひとつが「実現可能性」です。いくら計画だといっても、”絵に描いた餅”ではいけないということです。やはり実現の可能性があることを金融機関等対外的に充分にアピールできなければなりません。
この実現可能性については、新規にビジネスを立ち上げる場合と既存のビジネスを独立して行う場合とでは、事業計画において表現する場合、若干ポイントの置き方が違ってきます。
例えば、新規に事業を立ち上げる場合には、市場分析と自社の立ち位置が非常に重要となります。
しかし、いずれの場合でも共通しているのが以下の点ですので、これらを押さえた事業計画を作成すればよいでしょう。
- より綿密な市場分析を実施する
- 事業エリア(地域)における潜在顧客規模の把握する
- 競合他社に対する明確な差別化戦略(価格、サービス内容、品質など)があるかどうか
- 事業化に向けた具体的なアクションプランがあるかどうか
アクションプランについて
アクションプランとは何かというと、「誰に、いつまでに、何を、どのように実施するかの行動計画」のことをいいます。
アクションプラン作成の目的は、売上計画をより実現可能なものとするためです。
アクションプランを作成するのは、開業準備のとき、開業後の事業立ち上げのときです。開業準備として実施すべき手続きや作業と、開業後に実施すべき手続きや作業を箇条書きにして、それを時系列で並べて整理してみると、アクションプランが出来上がります。
このアクションプランをまとめる過程で、マーケティングコストの算出、人件費の詳細把握、設備投資額の詳細確定など、損益計画や資金計画策定のための考え方がより整理されますので、ぜひ作成してみてください。
アクションプランは、まず創業者自身に考えていただきますが、当事務所も事業計画作成の際に支援を行いますので、ご相談ください。
収益が上がるのか
事業計画を作成する場合、収益性について、すなわち収益が上がることが示されていなければなりません。
特に新規事業を立ち上げる場合には、一定の収益が上がるまでにはどの程度の期間を要するのか、かかる費用の見積もりは適切かなど具体的数値で説明することが必要です。
また事業の継続性にも関わってくることですが、新規事業は事業化のリスクが大きいため、売上や収益の確保が想定を下回った場合に、手元資金でどの程度の期間、事業継続が可能かなどを確認しておくべきでしょう。
一方、既存の事業を行う場合には、収益確保の道筋が合理的に説明がつく数値計画が示されていなければなりません。例えば、市場分析に基づく明確な売上計画や競争環境を踏まえての適切な費用計画を考えて示すべきでしょう。
また、当初想定したよりも売り上げが伸び悩み利益があまり出ないといったことが起きた場合に、計画の見直しや、代替案の検討なども視野に入れていることを盛り込んでおくべきです。
その創業計画書で融資が受けられるのか
創業する場合、自己資金が足りないと金融機関から融資を受けるということが出てきます。しかし、金融機関が融資を決定するのは、創業者が将来確実に利益が出せると見込んだ時だけです。
営業実績のない新規の創業者が金融機関から資金を調達するには、「事業計画」によって、将来確実に利益を出せることを証明しなければなりません。それだけ事業計画はとても重要なものなのです。
この事業計画を策定する際に大切なポイントは次のとおりです。
① 事業立ち上げの目的や動機が、売上計画と整合が取れているか。
② 事業化していくプロセスが、具体的なアクションプランで明確なものとなっているか。
③ 事業を実現可能にする数値的裏付けがあるか。
④ 数値計画を後押しする資金計画があるか。
要するに、事業計画は、絵に描いた餅ではなく、事業として成り立つと考えられる現実的で説得力のあるものでなければならないということです。
銀行が融資する判断材料とは
銀行が会社に融資する際の主な判断材料は、その会社の決算書です。過去の決算書を分析して、会社の格付けをします。格付けは6段階に分かれます。
- 正常先・・・業績が良好で、財務内容にも特段の懸念が無い場合
- 要注意先・・・業績が低調であったり不安定で、今後の管理に注意を要する場合
- 要管理先・・・債権の全部又は一部を3か月以上延滞していたり、貸出条件の緩和を行っている場合
- 破たん懸念先・・・今後経営破たんに陥る可能性が大きいと認められる場合
- 実質破たん先・・・再建の見通しが無いと認められるなど実質的に経営破たんに陥っている場合
- 破たん先・・・会社更生法や民事再生手続き開始など、法的整理・銀行取引停止処分により経営破たんに陥ってる場合
というふうに会社を格付けして、融資するかどうか判断するのです。ちなみに正常先が一番良いのは言うまでもありません。
しかし、これから創業しようとする会社は、当然のことながら決算を終えていませんので、判断材料がありません。
そこでどうするのかというと、「創業(事業)計画書」を大きな判断材料にするのです。創業融資を受ける際に「創業(事業)計画書」が重要だというのはそういう理由からなのです。
銀行が融資する際に一番参考にするのは決算書ですが、起業して間もない会社は決算書がないので、その代わりに「創業計画書」を主要な判断材料にするのです。
金融機関が融資をする際に一番気にするのが、「貸した金が戻ってくるのかどうか」です。これは当然のことですよね。
そこで創業計画書から、あなたの事業にはどの程度の資金が必要で、その収益性や将来性から融資したお金が回収できるかどうかを判断するのです。つまり創業計画書は、あなたの会社を評価するものさしなのです。
以上が金融機関の立場からみた創業計画書の必要性です。しかし、創業計画書を作成する意味はほかにもあります。それは次のようなことです。
- 自分の事業に対するビジョンや計画が明確になり、客観視できる。
- 社内外に伝えるメッセージに利用できる。
- 事業に行き詰ったときなどに見直すことで新たに取り組む糧になる。
これ以外にも、人によってさまざまな利点があると思います。
逆にいえば、創業計画書がきちんとまとめられないということは、自分の事業に対する考え方があいまいだということです。当然のことながら、あいまいな考えのままでは事業はおそらく成功しないでしょう。
要するに、創業計画書は、あなたの事業を成功させるためのひとつの手段として作成するのです。