これから起業創業される方が借りやすい融資として、日本政策金融公庫の融資と自治体の制度融資があります。

そして、日本政策金融公庫の代表的な融資として、「新創業融資制度」「新規開業資金」があります。

日本政策金融公庫は、国が100%その株式を保有している政府系の金融機関で、国の政策に基づいて中小企業向けのさまざまな支援サービスを行っています。

公庫の融資制度には以下のようなメリットがあります。

1.開業資金の借り入れが可能
国の政策を受けて公庫は新規創業を支援しているので、過去の実績がなくても融資を受けることが可能です。

2.無担保・無保証制度がある
公庫の創業融資には、「新創業融資制度」のように、無担保・無保証の融資があります。この融資制度のメリットは次のようなものです。

  • 不動産担保を不要としている
  • 生計を別にする第三者の保証が不要
  • 会社代表者の保証も不要
  • 信用保証協会の保証も不要

3.民間の金融機関より金利が安い
公庫は融資の種類によって金利が決まっているので、融資が可能と判断されれば、安い金利が一律に適用されます。これに対し民間の金融機関は、会社の格付けによって金利が決まりますので、業績の悪い会社は高い金利を要求されます。

4.固定金利で借りられる
公庫の融資は固定金利ですので資金計画が立てやすく安心です。一方、民間の金融機関は変動金利です。

5.長期間の借入が可能
公庫の場合は最長20年などの借入が可能です。それに対し、民間の金融機関は、半年から7年で返済するのが一般的です。

 

しかし、公庫の融資もメリットばかりではありません。デメリットもありますので、よく検討してから決める必要があります。

では、「新創業融資制度」と「新規開業資金」のどちらが有利かというと、これも一長一短があるのですが、新規開業資金をお勧めしたいのは、次のような人です。

  • 規模の大きな起業を予定している人
  • 担保物件や保証人がある人

その理由としては、

  1. 借入限度額が7,200万円まである。(新創業融資制度は3,000万円まで)
  2. 金利が1.25~1.85%と安い(新創業融資制度は、2.35%)

というメリットがあるからです。

ただし、デメリットとしては、担保や保証人が必要です。

ですので、逆に言えば、担保がなく、頼める保証人がいないが、起業の規模が小さくて創業にそれほど資金を必要としない場合には、やはり「新創業融資制度」が一番適当だといえます。

ただし、新創業融資制度にしても、新規開業資金にもそれぞれその他に、細かい条件がありますのでよく確認することが必要です。

そこでもう少し詳しく、新創業融資制度のメリットとデメリットについてみてゆきましょう。

新創業融資制度のメリットとデメリット

新創業融資制度のメリット

  • 不動産担保が不要
  • 生計を別にする第三者の保証が不要
  • 会社代表者の保証も不要
  • 信用保証協会の保証も不要

新創業融資制度のデメリット

  • 借入限度額が3,000万円(うち運転資金は1,500万円)
  • 公庫融資の中でも金利が高い
  • 返済期間が最長7年まで(設備資金は20年まで)

以上が主なメリットとデメリットですが、このほかにも満たさなければならない要件があります。

例えば自己資金の要件ですが、事業開始前または事業開始後で税務申告を終えていない場合は、創業資金の10分の1以上の自己資金のあることが確認できなければいけません。

新創業融資制度が他の融資とくらべて有利だとはいっても、やはり公庫が定めた要件をクリアしなければ借りられませんので、要件をよく確認することが必要です。

しかし、地方自治体の制度融資では、ほとんどの自治体で、自己資金の額が融資の条件になっているのと比べると、自己資金の9倍の金額まで借りられるので、その点では制度融資よりはメリットがあるといえます。

 

 

新規開業資金のメリットとデメリット

新規開業資金のメリット

1.借入限度額が大きい
7,200万円まで借りられます。(うち運転資金は4,800万円まで借りられます。)一方、新創業融資制度では、3,000万円までしか借りられません。(うち運転資金は1,500万円までです。)

2.金利が低い
基準金利は1.25~1.85%と、新創業融資制度の2.35%に比べ低く設定されています。

新規開業資金のデメリット

デメリットは、ずばり不動産などの担保や、保証人が必要ということです。

以上のことから新規開業資金が向いている人は、

  • 比較的規模の大きな起業をするのに十分な自己資金がないが、差し入れする担保や保証人のあてがある人

ということができるでしょう。

なお、返済期間は新創業融資制度と同じく、設備資金20年以内、運転資金7年以内(両方とも据置期間2年以内)となっています。