工事に伴い生じた建設廃棄物の運搬を元請業者が下請負人に委託する際には、その下請負人は収集運搬業の許可を得ていなければなりません。これは大原則です。

しかし、これにも特例があります。下請負人が許可がなくても運搬できる場合があるのです(廃棄物処理法第21条の3第2項)。ただし、次の条件をいずれも満たしていなければなりません。

特例が適用される場合

1.廃棄物は次のいずれかに該当する工事に伴い生ずる廃棄物であること

  • 解体工事、新築工事または増築工事以外の建設工事(維持修繕工事)であって、その請負代金の額が500万円以下の工事
  • 引渡しがされた建築物その他の工作物の瑕疵の補修工事であって、その請負代金相当額が500万円以下の工事

2.特別管理廃棄物以外の廃棄物であること。

3.1回あたりに運搬される量が、巻尺その他の測定器具を用いて簡易な方法により1立方メートル以下であることが測定できるもの又は1立方メートル以下であることが明確な運搬容器を用いて運搬するものであること。

4.廃棄物が運搬される施設が、元請業者が所有権又は使用する権原を有する施設(積替え又は保管の場所を含む)で、廃棄物を生ずる事業場の所在地の属する都道府県又は隣接する都道府県の区域内に存すること。

なお、4の元請業者が使用する権原を有する施設には次のようなものが該当します。

  • 元請業者が第三者から賃借している施設
  • 下請負人又は中間処理業者から賃借している施設
  • 元請業者と廃棄物の処理の委託契約をした廃棄物処理業者の事業の用に供する施設(積替え又は保管の場所を含む。)

5.廃棄物の運搬途中において保管が行われないものであること。

以上のような条件をすべて満たした上で、なおかつ、下請負人との請負契約書の中に、下請負人が運搬することを明記しておかなければなりません。

運搬様式を交わす

しかし、建設工事が基本契約書に基づくものであるなど、この基本契約書の締結時点では運搬する廃棄物の特定が困難な場合があると思います。

このような場合にどうするかというと、

1.請負契約書に個別の建設工事ごとに定められた「運搬様式」を交わすことを記載しておく。

2.「運搬様式」を排出事業者(元請業者)と下請負人との間で交わす。

となっています。

このことを定めた環境省課長通知は次を参照してください。そしてこの「運搬様式」は最後に掲載されていますので参考にしてください。⇒運搬様式

このように、下請負人が許可なく運搬できるのは、ごく限られた場合です。それ以外は許可が必要となりますので注意してください。

マニュフェストは必要

また、この場合でもこの廃棄物に係るマニュフェストは元請業者が下請負人に交付しなければなりません。なぜなら元請業者が排出事業者であることには変わりないからです。

なお、下請負人が運搬するのではなく他の受託者が運搬する場合に、元請業者が下請負人を経由して受託者にマニュフェストを交付することは差し支えありません。

ただし、この場合には、下請負人は、マニュフェストの写しの送付や保存等の義務は負いません。なぜなら運搬するのは下請負人ではなく受託者だからです。ですので受託者がマニュフェストの写しの送付や保存等の義務を負うことになります。