廃棄物の処理責任は誰にある?

廃棄物処理法では、「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」となっています。

これは一般廃棄物も含めた規定ですが、とくに産業廃棄物については、「事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない」とより踏み込んだ規定となっています。

このように事業者には廃棄物を処理する大きな責任が負わされているのですが、これを「排出事業者責任」といいます。

一方、同法では廃棄物の処理を他人に委託することを認めていますので、実際には他人に委託している場合がほとんどです。あなたの会社も許可を取れば委託を受けて処理を行うことができます。

しかし、ここで注意しなければならないのは、委託して行う場合でも、産業廃棄物の処理責任は排出事業者が負うということです。

たとえ適切な契約内容で他人に処理を委託した場合でも、処理状況の確認や一連の処理工程の把握を怠ると、排出事業者は当該工程において発生した不法行為の責任を問われる可能性が生じますので、油断はできません。

一般廃棄物と産業廃棄物とでは責任者が異なる

まず一般廃棄物と産業廃棄物とでは処理責任が違います。

廃棄物処理法では、「市町村は、一般廃棄物処理計画に従って、その区域内における一般廃棄物を生活環境の保全上支障が生じないうちに収集し、これを運搬し、及び処分しなければならない」となっています。

一方、産業廃棄物は、「事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない」となっています。

つまり、一般廃棄物の処理責任は市町村にあり、産業廃棄物の処理責任は排出事業者にあるということです。

ここでいう排出事業者とは、製造工場、事業場からの廃棄物であれば、その事業者が排出事業者ですが、法律で明確に定められていない場合もあります。

例えば、工場、事務所の清掃を委託された清掃業者は、清掃前から存在する廃棄物を集めているだけであり、清掃で廃棄物を排出しているわけではありませんので、排出事業者とはいえません。

一方、建設業の場合は、廃棄物の処理責任は元請業者にあると明確に定められています。

ただし例外として、下請負人が行う建設工事現場内での産業廃棄物の保管については、元請業者とともに下請業者にも産業廃棄物保管基準が適用されます。

しかし、下請業者が500万円以下の軽微な工事などで、請負契約の定めるところにより自ら運搬を行う場合は、この下請業者を事業者とみなして、廃棄物処理業の許可がなくても運搬が可能となります。

ただし、この下請業者が建設工事に伴い生ずる廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、この下請業者は事業者とみなされますので、廃棄物の処理の委託に関する規定が適用されることになります。

これは、たとえ元請業者の指示や示唆があった場合でも、下請業者に委託基準が適用されることになるので、この点に注意しなければなりません。

建設廃棄物の処理責任者は?

建設工事に伴って生じる建設廃棄物の処理については、「建設廃棄物処理指針」にまとめられていますが、これは建設業の監督官庁である国土交通省ではなく環境省がつくった指針です。

その中には、以前にも書きましたが、非常に重要なことが書かれていますので、もう一度繰り返します。それは、

建設廃棄物が解体工事、新築工事又は増築工事以外の建設工事以外の工事(維持修繕工事)であって、その請負金額が500万円以下の工事に伴い生ずるものである等の条件を満たす場合には、建設工事に係る書面による請負契約で定めるところにより、下請負人が許可を受けずに当該廃棄物の運搬を自ら行うことが可能である。

つまり、 ・解体工事、新築工事、増築工事以外の工事すなわち維持修繕工事 かつ ・請負金額500万円以下の工事 で排出された建設廃棄物は、産業廃棄物収集運搬業の許可を得ていない下請負業者が運搬しても問題ないですよ、ということです。

ただし、ここからが重要ですが、その場合でも、この建設廃棄物の排出事業者は元請事業者であるので、この廃棄物に係るマニュフェストは、元請業者が交付しなければなりません。

つまり、個人から家の解体工事を頼まれた元請業者は、マニュフェストを発行しなければならないのです。

元請業者から収集運搬の委託を受けた下請業者が発行するのではありません。

往々にしてこの点があいまいとなっていて、元請業者もこのことをはっきり理解していないことが多いので注意してくださいね。

下請負人にも責任がある?

建設工事に伴って排出する廃棄物の処理責任は、原則として工事の元請業者となっていますが、例外として、下請負人が行う建設工事現場内での産業廃棄物の保管については、元請負業者及び下請負人の双方に責任が生じます。

しかし、下請負人が行う500万円以下の維持修繕工事で、少量の廃棄物を請負契約の定めるところにより自ら運搬する場合には、その下請負人は事業者とみなされますので、廃棄物処理収集運搬業の許可が無くても運搬が可能となります。この点を同様の工事を請け負う下請負人の方は頭に入れておいてください。

また下請負人が、建設工事に伴い生ずる廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、下請負人は事業者とみなされますので、委託基準が適用されることになります。このとき、元請業者が委託するように下請負人に口頭で指示や示唆をしたとしても、責任を負うのは元請業者ではなく、下請負人ですので注意が必要です。

この場合、下請負人は、許可を得ている適切な業者に委託しなければなりません。

建設工事における排出事業者は「元請業者」です。ですので元請業者は建設工事に伴う廃棄物の処理には大きな責任を負っています。

ただし、他者に委託することもできます。これを委託処理といいます。

この場合は、排出事業者である元請業者は、収集運搬業者、中間処理業者又は最終処分業者とそれぞれ事前に書面で委託契約を締結する必要があります。

これは「廃棄物処理法」に定める委託基準等に従って適正な処理を確保することが義務付けられているからです。

例えば、

・適正な処理費用の支払いをする。

・優良産廃処理業者認定制度や熱回収施設設置者認定制度で都道府県知事等に認められた処理業者に委託する。

などに努めることも奨励されています。

ただし、元請業者に責任があるといっても、下請負人が現場内で行う廃棄物の保管については、下請負人もまた排出事業者とみなして保管基準が適用されるので委託処理には該当しないとなっていますので、下請負人もその責任を負うことになっていますので、注意しなければなりません。