特殊車両通行許可制度ができた背景
特殊車両通行許可という制度が何故できたのかご存じでしょうか?
おそらく、このことを知らずに特殊車両通行許可の申請を行っている方が大半だと思います。そんなことを知らなくても申請できますし、許可さえ取れればいいという方にとっては関心ないことかもしれません。
しかし、知っていると特殊車両通行許可という制度の細々としたルールの理解が早まりますので、ざっくりとご説明しましょう。
まず、道路はどんな車両でも通行していいとはされていません。
そこで、道路法という法律では、
「人が乗車し、貨物が積載された状態の車両の幅、重量、高さ、長さ及び最小回転半径が政令で定める最高限度を超える車両は、道路を通行させてはならない」(道路法第47条第2項)となっているのです。
ここで最高限度などの具体的数値を定めている政令とは、「車両制限令」と「車両の通行の許可の手続き等を定める省令」です。
しかし、この「通行させてはならない」という原則を貫くと、社会生活や経済活動に支障が生じます。どうしても制限値を超える車両はでてきますので。
そこで例外を認めて、
「橋、トンネル等における重量、高さの最高限度について、個別に制限することができる」(道路法第47条第3項)
「これらの制限値を超える車両を通行させようとするときは、道路管理者から特殊車両の通行許可を受ける必要がある」(道路法第47条の2)
となっているのです。
これが特殊車両通行許可という制度の本質です。
そして、許可を受けずに通行したり、許可条件に違反した場合は、許可取り消しなどの監督処分を受けるほか、罰則が適用されることになっているのです。
特殊車両がなぜ通行できるのか
車両制限令という政令で、道路を通行できる車両諸元の最高限度(一般制限値)が定められていて、この一般制限値を超える車両は原則として道路を走れないのです。
特殊車両とは
特殊車両とは、道路を通行できる車両諸元の最高限度(一般制限値)を超える車両で、車両の構造が特殊なものと積載する貨物が特殊なものとがあり、車種としては以下のようなものがあります。
- トラッククレーン
- バン型セミトレーラ
- タンク型セミトレーラ
- 幌枠型セミトレーラ
- コンテナ用セミトレーラ
- 自動車運搬用セミトレーラ
- フルトレーラ
- あおり型セミトレーラ
- スタンション型セミトレーラ
- 船底型セミトレーラ
- 海上コンテナ用セミトレーラ
- 重量物運搬用セミトレーラ
- ポールトレーラ
なぜ最高限度が設けられているのに、特殊車両の通行許可をとれば限度を超える車両が通行できるのかというと、
車両制限令で規定されている車両の幅、高さ及び長さなどの最高限度(一般的制限値)は、道路構造上の規格(道路構造令)と同じ考えで規定されています。
この道路構造令に基づいた規格の道路については、徐行等の条件を付せば、最高限度を超える車両についても安全な通行が確保できるとされています。
つまり、全く通行できないと禁止されているわけではないのです。
例えば、橋梁を通行する場合に、
・徐行すれば橋梁に対する衝撃を軽減できる。
・対向車線の制限により、橋げたに生じる総荷重を軽減できる。
・大型車交通量が少ない道路では、橋梁に一度に複数の大型車両が載る状況はあまりない。
ということが想定されるので、条件を付けて通行を許可すればよいと行政庁は考えているわけです。
ただし、道路構造は箇所により、また設計年次により異なるので、特殊車両の通行許可は、申請の都度、審査を行うことになっているのです。
特殊車両の通行許可が必要な場合
では特殊車両の通行許可が必要となるのはどんな場合でしょうか?
特殊車両の通行については、実にさまざまなケースがありますので分かりにくいところではありますが、一般的にいうと次のような場合です。
車両制限令に定める最高限度(幅、重量、高さ、長さ及び最小回転半径)を超える車両で、車両の構造又は車両に積載する貨物が特殊であるためやむを得ないと道路管理者が認める場合は、特殊車両の通行許可の対象となります。
これでは抽象的でよくわかりませんね。そこでこれを具体的に、大まかな場合に分けると次のようになります。
1.車両制限令の最高限度を超えている車両の場合
(例)建設機械、重量物運搬の場合
2.一部の道路について自由走行できる車両がそれ以外の道路を走行しようとする場合
(例)高速自動車国道の特例の対象となるトレーラ連結車の場合
3.車両制限令の最高限度は超えないが、個別の橋梁、トンネルなどで重量制限、高さ制限がなされている経路を走行する場合
これをみてお分かりのように、車両が必ずしも一般的制限値を超えていることが条件ではないのですね。超えていなくても特殊車両の通行許可が必要となる場合があるということは覚えておかなくてはいけません。時と場合によってというのがまさに当てはまるのです。
車両の構造の特殊性とは
特殊車両通行許可が必要となる場合とは、次の1、2の条件を満たすときです。
- 車両の幅・重量・高さ・長さ及び最小回転半径が車両制限令に定める最高限度(一般的制限値)を超えるとき
- 車両の構造又は車両に積載する貨物が特殊であるとき
1の場合はすぐにわかると思いますが、2の車両の構造の特殊性とは何でしょうか?
車両の構造の特殊性
1.車両の構造上、寸法(重量、幅、高さ又は長さ)において分割不可能であるもの
道路法第47条第1項又は第3項の幅等の最高限度を超える車両。ただし、取り外し可能なものは取り外させた状態で自走するものをいう。(例:トラッククレーン台車、ラフタークレーン、新規開発車両の単車等の建設機械)
2.一部の道路を自由走行できる車両
☑バン型セミトレーラ連結車等の特例
セミトレーラ連結車等の特例車種(バン型、コンテナ型、タンク型、幌枠型、自動車運搬用)
特例車種のうち、高速自動車国道および重さ指定道路のみ自由走行できるものは、その他の道路では許可が必要となる。
☑新規格車
「新規格車」とは、車両制限令の改正(平成5年11月25日施行)により新たに高速自動車国道及び道路管理者が指定する道路(重さ指定道路)を自由走行できるようになった総重量20t超の車両をいう。
新規格車が自由走行可能な道路以外の道路を通行する場合は、車両の構造が特殊な車両として許可の対象とする。ただし、積載する貨物の特殊性は問わない。
3.あおり型等のセミトレーラ連結車等
あおり型、スタンション型及び船底型のセミトレーラ連結車等(貨物の落下を防止するために十分な強度のあおり等および固縛装置を有するものに限る。)
なお、総重量44tを超えない範囲で許可の対象とする。
特殊車両通行許可を取るための条件とは
許可申請された特殊車両の通行を許可するかどうかの技術的審査を検討する基準となるのが「特殊車両通行許可限度算定要領」というものです。
これに加え道路の情報を集めて作られた「道路情報便覧」で許可するかどうかの審査が行われるのです。
算定要領による審査項目としては、「重量」、「幅」、「高さ」、「曲線部」、「交差点」がありますが、申請車両の諸元が算定要領の範囲を超える場合があります。
そんな場合には、個々の道路管理者がさらに精度の高い検討を行います。これを個別審査といいます。
例えば、申請車両の寸法又は重量のいずれかが「算定要領」の許可限度を超える車両で、算定要領による算定が行えないものについては、それぞれの通行経路に係る個々の道路管理者が道路構造に与える影響について審査します。
具体的には、橋がどれだけの重さに耐えられるか(橋の耐荷力計算)、又は載荷試験等の方法に基づいて詳しく調べます。この検討は、通行経路が「道路情報便覧」に収録されていない場合にも、同様に行われます。
また、寸法が超える場合には、軌跡図をみて検討します。超寸法の際に、軌跡図の提出が求められるのはそのためです。
ただし、超寸法でなくても軌跡図が求められることがありますので、許可を受けるためには提出を拒むことなく提出するようにしましょう。
以上のように特殊車両通行許可に係る審査は、「算定要領」及び「道路情報便覧」を用いて行われていますので、このことを理解しておくべきでしょう。
※許可が要らない場合(増トン車の場合)
新規格車のひとつである増トン車は、重さだけが車両制限令の上限である20トンを超える車両です。
この増トン車は、高速自動車国道と重さ指定道路を走る際には許可が要りません。
最近は国道のほとんどが重さ指定道路のため、許可が必要ないと勘違いする場合がありますが、その他の道路を走る場合には、やはり許可が必要となります。
またオンライン申請は、経路に国道が含まれていなければできないことになっていますが、逆に増トン車は高速道と重さ指定道路を通行する場合は許可が必要ないので、オンライン申請は使えないことになります。
許可の有効期間
特殊車両通行許可の許可の期間は一律ではなく、事業区分および車両の諸元により、次のとおり決められています。
事業区分とは、「路線」「区域」「その他A」「その他B」という区分のことです。
- 路線・・・路線を定める自動車運送事業用の車両(路線トラック、定期便トラック)1年
- 区域・・・上記路線以外の自動車運送事業用の車両(区域トラック、海上コンテナ、その他の営業車) 1年以内
- その他A・・・上記路線、区域以外で、通行経路が一定し、反復継続して通行する車両(営業車以外の自家用車で、クレーン車等)1年以内
- その他B・・・上記路線、区域、その他A以外の車両で、1回限り(反復継続しない)通行する車両(発電機等を運ぶ車両で1回限り)必要な期間、ただし6か月以内
※区域、その他Aの場合の許可期間は原則1年以内です、車両が別表に掲げる数値のいずれかを超える諸元にあっては、6か月以内です。